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海外観劇日記

海外(主にイギリス)で観劇したミュージカル・芝居の感想覚え書き

COMITTEE...

COMMITTEE... (A NEW MUSICAL) The Public Administration and Constitutional Affairs Committee Takes Oral Evidence on Whitehall's Relationship with Kids Company (Donmar Warehouse)
22/July/2017

Music by Tom Deering
Book and lyrics by Hadley Fraser and Josie Rourke, edited from the transcript of the evidence session

ドンマーの新作verbatimミュージカル。
verbatim theatreとは実際に発された言葉をそのままセリフにするという作劇手法で、この手法に興味があること、またひいきの俳優が作詞家デビューするということもあって、観にいくことにした。
資金運営に失敗したチャリティ団体Kids Companyのスキャンダルを題材に、Kids Company元代表と重役が国会議員で構成される委員会に呼び出された際のやりとりをもとにミュージカルを作るという意欲作である。


感想

結論からいうと、取り組み自体は評価できないこともないが、残念ながら題材選びと手法と出来があまり良くなかった。
飽きがくる前に終わるコンパクトさだったこと、ミュージカルとしてのルックスや歌唱のクオリティはそれなりに良かったかと思う。

まず題材だが、なぜverbatim作品を作るにあたりこの三時間の公聴会だけを取り上げるのかが疑問。
Kids Companyのスキャンダル自体は世間の注目を集めたことだろうし、この公聴会自体がそのピークだったのかと想像はするが、実際の会話だけをみるとただただ質問と答えの噛み合わないミスコミュニケーションが続くばかりだ。
冒頭の布石がフィナーレに活きず消化不良で終わってしまうので、観劇後、当時の新聞記事などで知識を補完したくなった。
スキャンダル前後の政治的文脈を踏まえ、実際の映像をうまく編集してテロップなどを足したドキュメンタリー番組を見た方がエンターテインメントとして満足できそうだ。
"We want to learn"という一行がミュージカルを組み立てる上でのキーワードであり冒頭とフィナーレで何度も繰り返されるフレーズだったのだが、何度舞台上から歌いこまれても、(むしろそれはこっちのセリフです…)と思ってしまった。

手法としては、もっと広範囲の材料を使ってStuff Happensのようなストレートプレイを目指した方が良かったように思う。
このミュージカル自体が1時間20分ほどの短さだったが、歌にすると同じ時間における情報量も減るので、さらに内容が薄弱な印象。
またミュージカルにしたからにはそれを補って余りある何か、を見たかったがそれは感じることができなかった。London Roadにあったような、実際のダイアローグの速さや間を音楽的に拡大解釈したような面白み、遊びもあまり無い。

ミュージカルの音楽的、劇的な出来もあまり褒められたものではないと思う。
現代的な和音や言葉の乗せ方自体は真っ当で、舞台に乗せるクオリティにはなっているし、俳優たちも悪くはない。ミュージカルとしての体裁だけは整っている。
しかし、議論の潮目となるような発言がことごとく歌(音楽)ではなくプレーンな普通の台詞で表現されており、それは私からすればミュージカル劇として致命的に思える。


時事問題をミュージカルで見せようという実験的な舞台であることは分かるが、ドンマーというそこそこ資金がありそうな劇場でさえ、このような挑戦が上手くいかなかった場合にうまく立ち回れないのが難しいところだと思った。
実際の会議室を模したセットはなかなかうまくデザインされていたが、スクリーンや台詞でいささか説明を付け加えすぎるのはジョシー・ルーク作品の特徴ではないだろうか。(今回彼女は作詞の担当で演出は別人だが)
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