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海外観劇日記

海外(主にイギリス)で観劇したミュージカル・芝居の感想覚え書き

THE PATRIOTIC TRAITOR

THE PATRIOTIC TRAITOR (Park Theatre)
23/Feb/2016

『ルイス警部』で人気のローレンス・フォックスがそのテレビシリーズが終わった次の仕事としてこの舞台に出演する…ということをちっとも知らず、プレビュー公演が始まる時期に初めて知り、まあ当然ながらチケットは完売していた。
親切な方に教えてもらいオンラインで当日券が買えることが分かったので、さっそく翌日に購入しプレビュー公演を観に行った。

Park Theatreはウエストエンドから離れたFinsbury Park駅から徒歩数分の劇場である。
初めて行ったのがこの2月のソワレ公演だったので、駅周りにたくさんいたアーセナルファンや夜道の暗さに少し怖じ気づいたが、劇場についてみると明るく居心地の良い小劇場だった。
公演前にはカフェで軽食をとり、終わった後にはカウンターでパイントを飲む客や出演者もいて、とてもアットホームな雰囲気。
大きい方の劇場PARK200で鑑賞したが、端の席でも見やすかった。


作・演出 Jonathan Lynn

出演
Leon Blum / Pierre Laval | Niall Ashdown
General Le Gallet / Captain de Courcel | James Chalmers
Philippe Pétain | Tom Conti
Charles de Gaulle | Laurence Fox
Yvonne de Gaulle | Ruth Gibson
Lord Halifax / General Weygand | Tom Mannion



感想(がっつりネタバレ)

フィリップ・ペタンとシャルル・ド・ゴールは元軍人で、かつて友情で結ばれた上司と部下という立場であった、ということに焦点を置いた歴史劇。1913年から1945年を舞台にしている。時間を経て2人が政治的に対立する経緯、第二次世界大戦中の独仏休戦、ヴィシー政権崩壊とペタンの晩年までを描く。
狭い舞台で舞台美術は最小限におさえながら、背景の大きなヨーロッパ地図で戦況を示したり、いくつか家具を動かして違う部屋を表現しており好ましい印象だった。

全体的にはテレビのコメディのような、少しブラックアダーみたいな雰囲気に感じた。
私は例のように歴史に弱いので、シャルルドゴールとは空港の名前だと思っているほど無知なまま客席にいたのだが、おおむね楽しく見た。
主役のトム・コンティは話し方だけで年齢と精神状態の変化を見せてくれるので時間軸が分かりやすい。
対するローレンス・フォックスは細身で背が高い。若き日のド・ゴールをビッグ・バン・セオリーのシェルドンみたいな空気の読めないキャラクターとして描いており、無表情のコミックリリーフとして頑張っていた。

基本的にはコメディであるが、終盤はシリアスさが増す。
一番好きな場面は最後に2人が実際に相対するシーンだ。
The Patriotic Traitor(愛国的売国奴と訳しても良いかもしれない)とは、これ以上の国民の犠牲を避けるためにドイツに休戦を申し込んだペタンのことを指す。
クライマックスでド・ゴールがペタンのこの決断を「国(nation)とは国民人口の合計のことではない。国とは神話だ。その存在はみなの精神的信条にある。その信条が国民をひとつにするのだ」と批判する。(戯曲p102より拙訳)
ここで言葉に詰まるペタンは議論に負け、芝居上も歴史的にもド・ゴールに負ける。
2時間も見ていると若干集中力が途切れそうになっていたのだが、この、おそらくはターニングポイントになる主張でぐっと空気が張りつめた。

劇の最後にド・ゴールがペタンとの回想シーンに戻っていく部分は、少しセンチメンタルすぎるような、今までの劇のバランスと比べるといびつなようにも感じた。2人のストーリーをきちんと終わらせたい作家の思い入れがあるのだろうか。もしくは彼らの話す内容は史実からの引用だったのかもしれない。


参考文献
Lynn, J. (2016) The Patriotic Traitor. London: Faber and Faber Limited.
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